キンちゃんが行くVol.3
1.
伊豆海洋公園8時間泳
日付:2007年4月17日(火)
時間:09:00〜17:00
場所:静岡県伊東市伊豆海洋公園屋外海水プール(海水:50m)
泳者:キンちゃん(女性)
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今回は久しぶりのプールです。 |
種目:8時間泳(ソロ)
結果:23km完泳(目標:22km)
天候:雨
水温:16℃
2.
ATって?
プールでの長距離泳の目的はペース配分である。極力イーブンペースで終始完結したい。今まで30時間で70km泳ぎ、24時間で60km泳いできた。これらのデータから、石井コーチは8時間で22kmのペース配分表を作ってきた。これは100m、2分05秒のイーブンペースだと可能な距離である。そこで私は100m、2分00秒でどのくらい維持継続出来るか試してみたくなった。結果、終始2分00秒のフラットなペースで8時間を泳ぐことが出来た。まあやっと出来るようになったわけだが、ここに至るまでの過去を思い出してみた。
OWS(オープンウォータースイムレース)を知って仲間が出来た。静岡県伊東市にお住まいの伊藤さんと、東京でOWSファンなら知らない人はいないほど有名なホームページ、「泳ぐ旅人」を作っている小林さんである。3人で「練習でもしようや」と言って、伊藤さんの地元、伊東市にある伊豆海洋公園の屋外プール(50m)に教えられて来たのは確か2000年のときだったと思う。
以来、ダイバーでもある私はここが気に入って、それからちょくちょくお邪魔するようになった。とにかく海水のプールなのと冬でも屋外で公開しているのがドーバーを目指す私にはピッタリのプールだと感じていた。確か石井コーチと知り合ったのもこの頃だったと思う。またこの頃から石井コーチは「長距離はイーブンペース!」とよく言っていた。石井コーチの言う「長距離」とは、距離なら10km以上、時間なら3〜4時間以上を指している。
確かに私も6時間くらい泳ぐ練習をここのプールで何回か行っているが、10km以降、3〜4時間以降に“ガタッ”とペースダウンしてしまう。それからはいくら速く泳ごうとしても身体が動かないのである。どうしたことか。と思うが、一生懸命泳いでもペースは落ちていく一方なのである。
この時、石井コーチから「“AT”で泳ぎなさい。」と教えられた。“ET”ならスピルバーグのSF映画と知っているが、“AT”って何だろう? クルマのオートマチック車? それなら私も免許を持っている。
“AT”とはAnanerobic Threshold の略で「無酸素性作業閾値」だそうである。日本語で聞いてもチンプンカンプンな私。そこで日本人では唯一のOWSではプロスイマーである松崎裕子さんに聞いてみた。すると答えは「ダラダラ速く」なのだそうだ。“ダラダラ”とはゆっくり、つまり「いつまでも続けられる」の意味で、“速く”とは「その中で最も“速く”」の意味なのだそうである。つまり「いつまでも続けられるスピードの最高速」を言うらしい。
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誰もいない50mプールで、独り黙々と泳ぐ。 |
その他に10km以上、3〜4時間以上泳ぎ続けるとペースダウンする理由に、「エネルギーの枯渇(こかつ)」←(カッコつけて難しい字ばかりを使っている石井コーチだと思う私)もあるらしい。それから「泳ぎながら栄養補給をする」と知った私。「バナナが良い」と聞けばバナナを食べ、「ゼリー状の栄養物が良い」と聞けばゼリーを飲んだ。もちろん中には口に合わないものもあったし、“甘酒”など試してみたい飲み物もあった。当然試したし、失敗も成功もいろいろあったが、そのように試行錯誤することが面白かったし、何よりいろいろ知らないことをいっぱい知った。とにかくここ、伊豆海洋公園屋外プールが私の長距離泳のスタートラインだったようにも思える。
以来サイパンへはKFCトライアスロンクラブのレースに参加したり、外の50mプールで長距離泳の練習をしたり、エーストマトでダイビングを愉しむようになって行く。私のサイパンは欲張りで忙しいのだ。
3. 花月荘
16日(月)、14時17分三河安城発のコダマに乗り、熱海へと移動した。行く時に雨がパラパラと降っていたので傘を持って行ったが、やはり何処か抜けている私。降りる直前に「傘や携帯電話、帽子などの忘れ物が非常に多いので、十分気をつけて下さい。」と車内放送があり、そして「そうだよな。傘、忘れやすいよな。親切な放送だな。」と確認までしたのに、「まもなく熱海」と聞いた瞬間、「傘」の“カ”の字も忘れ席を立ち、ホームへと出た。歩いているうちに傘を忘れたことに気付き、恥ずかしいが駅員さんに「今、傘を新幹線の中に忘れてしまったんですが・・・」と言うと、「傘はもう東京に行っちゃいました。東京に取りに行くか、着払いで送りますけど。」と答えてくれた。しかし「あっ、そうですか。もういいです。」と傘は諦めた。
あーあ、やっちゃった!仕方がない。熱海はザーザー雨。それから乗り継いで城ケ崎の駅で下車。駅は結構お洒落で「観光地!」と思わせる作りだった。宿泊する「花月荘」に電話をしたら、「タクシーで来て下さい」とのこと。後からやって来る石井コーチの夕食などを買うため、私はタクシーでスーパーに連れて行ってもらい買い出し、それから「花月荘」へと向かった。
ここ「花月荘」は「キャンピングペンション」とも言っているように、一泊素泊まりが1名、2,800円と安い。しかも自炊が可能なのだ。安く練習するに、もってこいの場所である。ただし、結構奥の奥までペンションや別荘街をくねくねと通り抜けて行く。初めての人は道に迷うという感じ。もし雨が降っていなかったら歩いて行って、おそらく道に迷っていたであろう。傘忘れて良かった。何が「災い転じて福となす」か、わからない。
ちなみに今日の宿泊は私たち2人だけ。石井コーチが来るのは22時くらいかな? それまで私はお風呂に入って、ビール飲んで、ヤッコと白菜のキムチを食べて眠くなったから横になった。そしてそのまま道に迷っているコーチのことなどすっかり忘れ、熟睡していたのだ。
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力泳 |
戸が開く音と同時に話し声が聞こえ、どうやらコーチが30分も道に迷いながら花月荘に着いたらしい。道案内なんか私に電話しても出来るわけがない。宿の主人と携帯でやりとりしたらしい。再び私は起きて乾杯し、夕食なしでお腹をすかせたコーチはがっついて飲み食いし、キンは思っていることがたくさんあったのでコーチに聞いてもらっていたら、気が付けば並んでいるビールの空き缶が16本。話しに夢中になると知らず知らずに時間とビールが進んでいた。やはり話し好きな飲兵衛が揃うとキリがない。次の日は8時間泳ぎ続けるというのに24時を回っていた。
4. 8時間泳は
朝5時には目が覚め、「まだ時間があるな。」と6時まで布団の中でうつらうつらする。朝食は7時から。それまでプールに行く準備をしておく。と言っても海練習みたいに栄養補給品を作らなくてもいいから楽チン楽チン。補給品はコーチがプールサイドで作ってくれる。のんびりのんびりし、朝食はご飯、インスタント味噌汁、味付け海苔、納豆である。ちなみにこれらは花月荘のサービス。つまり無料(タダ)なのである。
泳ぎ出すと40分毎に栄養補給が来る。だから泳ぐ前はあまり食べない私だが、この日はご飯を半分食べ、朝食を頂いた。今までの経験上、泳ぐ前日の食事内容と当日の食事内容を考えて食べないと、泳いでいる途中にトイレの問題が発生し、往生する破目になることがある。女性水着の着脱は大変だし、ラノリンも手についてしまう。しかもプールだと休憩時間に制限がある(8時間泳は回数に無関係で20分までの休憩)し、非常に気を使う。
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海にはないもの。それはターン。 |
伊豆海洋公園のプールは、8時40分受け付け開始である。8時に花月荘を出て5分位で着いた。ああ、今日は雨か・・・。プールの近くまでクルマを付け、荷物を降ろし、クルマは駐車場へと移動する。また雨の中を歩きながら、以前の風景を思い出し、「“ダイビング用のお風呂!”、ああこのことか」と、もうすでにお湯が入っていて温かかった。
徐々に施設や設備が綺麗にされていくのがわかる。と、プールに戻ると、しまった、少し外に出ていた食料をカラスにつっつかれていたのである。忘れていた。ここは白いポリ袋を置いとくだけで、カラスが食べ物入っていないか、あさりにくるんだ。案の定、スープと焼き海苔につっつかれた後があった。
8時40分、受け付けの手続きを済ませ、準備万端。と、プールサイドで青い服を着た男の方の姿を見かけて走って行ったが、何処かに行って姿を見失ってしまった。そして昔、ダイビングで使っていたテーブルを見ると、ウエイトが二本置いてあった。「多分ダイブドリームの人達、今日は来られるな」、「さっきは海洋状況でも見に来られたのだろう」。ここのショップでのダイビング経験がある私は何となくわかるのである。「さあ、水着になるか!?」、「コーチ、ラノリン塗って下さい」。しまった。温めていなかったからカチカチだ。「指が折れるー!」と石井コーチ。「大丈夫?」
石井コーチは必死であった。気温13℃、雨、風が少し吹いており、水着姿の私は寒い。「早くーっ!」と追い立てるのだ。これで時間がかかり、8時58分にやっとプールに足を入れる。「ヒェ〜〜〜、冷たい!」。水温は16℃だが、私が弱ッチーのか、「冷たいよー!」と叫ぶ。「この前と一緒だ。大丈夫?」、と石井コーチだが、「ヒェ〜〜〜〜!」と言いながら私はスタートを切った。初めの入り(100m)が1分45秒、私にしては速いので目を疑った。次は1分53秒。出だしはまあまあである。
ペース配分表のラップは2分05秒がズラ〜〜〜〜ッと続く。「まだまだ余裕じゃん!」。1時間で3,000m。2時間で6,000m。「順調じゃん!」、「さっき“ダイブドリームの森田さん”という方が見えたよ。キン知っとるか?」とコーチ。やっぱりさっきの後ろ姿は森田さんだ。私のこと覚えてくれていたんだ。
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雨の中で力泳は続いた。 |
でもさ、16℃だからか寒い。栄養補給は“ちゃっと”1分以内に飲んで泳いだ方が暖かい。ジッとするとすぐに寒くなるので「コーチ、もう泳いでいい?」と何回訊いたことか。だから栄養補給後の100mはだいたい1分54秒が多い。そして2分00秒のイーブンが続くのだ。毎回毎回ターンする度に私は時計を見てチェックをしている。この動作がしたかったんだ。ロングのプール練習も大好きである。
と、栄養補給している間に1本目のダイブが終わったのか、森田さんが話し掛けてきてくれた。そして4年ぶりの再会、おそらくまだ続けて冷水を泳いで練習しているとは思ってもみなかったのだろう。そして簡単に4年間の空白な時間のいきさつを話し、今ここで泳いでいることを納得してもらえた。
おおよそだが6時間が過ぎた。まだまだ2分00秒のイーブンが続いている。考えてみると4年前に2分00秒のイーブンペースは6時間ももたなかった。目指すは“2分を出ないように”だが、気が付くといつも2分は越してしまっていた。その頃から比べれば、やはりイーブンペースがかなり身についたと思う。
今日はかなり良いペースで泳いでおるが、寒さが身に凍みて「早く2時間経たないかな?」と、「2時間泳げば終わる!」と、そればかり考えていた。ひとたび止んでいた雨もまた降り出した。森田さんも帰られるのか、挨拶をしに来てくれ、「施設の皆さんとでお互いに協力しあい、応援してくれる。」と言ってくれた。何よりも心強い。ここでのプール練習は久しぶりだが、また泳ぎに来たいと切望した。また2分00秒イーブンペースで終始完結することが出来、予定の22kmより1km余分に泳ぐことが出来た。
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サブッ! |
5. 嬉しい応援者たち
プールから上がるときが大変。足がカチンカチンに固まっている。大腿部が痛い。“ちゃっと”シャワーを浴びる。コーチは可哀相だけど、一人で後片付け。駐車場からプールの近くにまでクルマを持ってきて、荷物の運搬をしている。風が“ビューッ”と吹くとシャワーのお湯もあおられて寒い。デブだからか、シャワーが身体全体にかからないのである。前を向いたり、後ろを向いたり、足だけ暖めたりで、シャワーがかかっているところは温かいがが、出ているところは寒い。コーチの後片付けが終わるまで浴びさせてもらった。
ようやく片付けも終わってシャワーも終わり、18時近くの帰りがけに施設のスタッフもちょうど帰るころで、ちょうどフロントの前でご挨拶をした。すると「また来て下さい。掲示板にも載せていいですか?」と言われ、「よろしくお願いします。」と答えた。「ドーバーって、どういう所か検索して見ていたら、藤田さんが出てきて、今泳いでいる人だと思ってびっくりしました。」とも言われた。
森田さんの配慮のお陰で無事に終わらせることが出来た。本当にありがたいことだ。再び私たちはここで練習させていただくことを約束し、クルマは花月荘に向かった。だがやはりすぐにはたどり着けず、道に迷いながら帰った。
いずれにせよ今回の収穫は「“AT(ダラダラ速く)”で泳ぐ。」が身に付いたことである。ちなみに栄養と水分補給は炭水化物に果糖を加え、お茶や紅茶で味付けしたものだが、1回で約ご飯なら軽く茶碗1杯分、パンなら食パン2枚分のエネルギー補給になる。これを40分毎に採るのであるが、これさえも落ち着くまで試行錯誤があった。とにかく長距離はATを含めたトレーニングや栄養補給で、自分の身体との対話を大事にすることが必要だと実感したのである。
2007年5月 藤田美幸 石井晴幸